重防食塗装って?
防食塗装とは金属やコンクリートなどが腐食しないように守るための塗装です。
塗装は基本的に腐食(錆)を防ぐ事が目的なので全て防食塗装と言えばそうなのですが。
重防食塗装の歴史は意外と浅く始まりは1970年~1980年頃とされています。
それ以前の塗装は一般的な錆止め塗料やフタル酸樹脂系の塗料を使用しており、
短期間で頻繁に必要となる塗り替え工事や点検・保全などが問題となっていました。
そこで臨海部や海上の大型構造物のメンテナンス周期延長などを目的とし、
通常の防食塗装より耐久性の高い塗装として考案されたものが「重防食塗装」です。
一般的な塗装ではすぐに錆びてしまったり、剥がれてしまうような
腐食性の高い環境で建設・設置される鋼構造物に使用される事の多い塗装仕様です。
関門橋、瀬戸大橋、明石海峡大橋、東京湾アクアラインなども重防食塗装との事。
重防食塗装と一般塗装との違い
一般塗装と比較して重防食塗装は遥かに高い耐久性を持っている訳ですが、
何が違うの?そもそも一般塗装って?と疑問になるかと思います。
自分も調べたことは無く、しょぼい塗料を使ったしょぼい塗装ぐらいのイメージでした。
調べてみた結果
塗料や塗装仕様は多岐にわたり耐○○仕様や重○○仕様などいっぱいあります。
一般塗装が何かと言われると上記の仕様に当てはまらない仕様という事みたいで
なんともざっくばらんな答えでした…
基本的にはジンクなどの特殊な塗料を使わず、アルキド・フタル酸樹脂系を使った
それほど耐久性が高くない塗装みたいな認識でいいと思いますが。
逆に重防食塗装は以下のような定義とされています。
・ 無機あるいは有機ジンクリッチペイントの防食下地を有する
・ 腐食因子の遮断性に優れた塗料を下塗塗料とする
・ 耐候性に優れた塗料を上塗塗料とする
・ 合計膜厚は250~1000μm程度である
・ 新設塗装に期待する耐久性は、厳しい腐食環境で30年以上である
色々と条件がありますが、これをクリアしたものが重防食塗装と呼ばれます。
重防食塗装の方法
上記の条件をクリアすれば全て重防食塗装となるので、実際の仕様は様々です。
塗料や膜厚、塗装回数などを周辺環境や耐久年数を考慮し追加・変更する必要が
あります。
今回は重防食塗装でも比較的簡素な仕様の一例を紹介します。

まずはブラスト処理にて素地調整を行う事が必須となります。
SSPC SP-10 又は ISO Sa2.5 以上の洗浄度にて施工し、表面の付着物を取り除き
金属素地を完全に露出させる必要があります。
亜鉛を多く含んだ特殊塗料である有機 or 無機ジンクリッチペイントで塗装します。
このジンクリッチペイントで塗装する事が一般塗装との最大の違いとなります。
イオン化傾向を利用した犠牲防食作用により錆から防ぐことができます。
またこの塗装はブラスト処理完了より4時間以内に行う必要があるので注意です。
厚膜型無機質ジンクリッチペイントを使用した場合に限りますが、
エポキシ樹脂塗料など顔料容積濃度の高い塗料を30%~50%ほど希釈し塗装します。
この作業をミストコートと呼びます。
ミストコートは無機ジンクリッチペイントが30μm以上塗装された場合に作られる、
塗膜内の空隙とそれによる発泡を防ぐために必要な塗装となります。
塗料の種類によりますが乾燥膜厚は30μm~50μmが適正と言われていますが、
塗装仕様書では一概に乾燥膜厚を指定できないため膜厚指定はなしとされる工程。
厚膜型エポキシ樹脂塗装にて120μm以上塗装します。
塗装で錆を防ぐ能力が高いのはこの下塗とジンクリッチペイントになります。
更に耐久性を必要とする場合は、この塗装を何度か塗り重ねていきます。
上塗塗料と同じ種類の中塗塗料を使用し、塗装を行います。
この中塗で異なる種類の塗料となる下塗と上塗をしっかり密着させます。
上塗は耐候性に優れたフッ素樹脂塗料を使用しています。
耐候性が劣りますがウレタン樹脂塗料でも重防食塗装仕様に対応しています。
【塗料の種類 ~樹脂の特徴について~】
上記の各工程を通常以上に厳しく管理・検査を行う必要があります。
塗膜厚のムラなどがあった場合には薄い箇所より期待された耐久年数を待たず、
腐食が始まってしまう恐れがあるので注意です!
まとめ
重防食塗装は臨海部や海上にある大型構造物のメンテナンス周期延長を目的として
考案された防食性、耐久性に優れた塗装仕様となります。
簡単に言うと素地調整はブラスト処理、ジンク塗装、その後は耐久性・耐候性に
優れた下塗~上塗塗料を塗り重ねていき合計250μm以上となれば完成です。
通常の塗装と大きく異なる点はブラスト処理後にジンク塗装を行う点です。
その高い耐久性によりライフサイクルコストを最適化、環境・作業・設備の負担も
軽減する重防食塗装の需要は今後も増加していくと見込まれます。
【重防食塗装について|耐用年数を超える長寿命化】
【LCC(ライフサイクルコスト)を低減させる塗装】