錆の種類について

錆の種類

前回のメールマガジンでも紹介した鋼の強度を低下させる「赤錆」ですが…

実は赤錆以外にも「黒錆」や「白錆」など性質も影響も異なる種類の錆があるのを

ご存じでしょうか？

金属の種類や周囲の環境（温度・湿度・大気成分など）によって発生する錆は変化し

現在では代表的なもので7種類あるとされています。

7種類の中には金属を破壊・損傷するのではなく、逆に保護する働きを持った

「良い錆」も存在します。

良い錆？悪い錆？

金属に発生する錆には「有害な錆」と「有益な錆」の2種類が存在します。

良い錆と言われるとイメージしにくいと思いますが、身の回りの製品にも多く

活用されています！

例えば鉄製の調理器具である中華鍋やフライパン、スキレットなどの黒い表面は

「黒錆」と呼ばれる酸化被膜となります。

錆の一種ですが、この黒錆は赤錆の発生を防ぎ金属表面を保護する効果があります。

また鎌倉の大仏や自由の女神などの銅像が緑色に見えるのは「青錆」に覆われているためです。

青錆又は緑青（ろくしょう）は銅特有の錆で表面を覆い隠す事で、内部の腐食を

食い止める働きをしています。

この様に「錆=金属にとって悪いもの」といったイメージがありますが、

私たちの周りにはあえて錆びさせることで金属を保護させているものも多くあります。

7種類の錆を紹介

金属に発生する錆の7種類について

発生する対象の金属と良い錆なのか？悪い錆なのか？

その性質について紹介します！

①赤錆

対象金属：鉄、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄

主成分（化学式）：酸化第二鉄（Fe₂O₃）

鉄が含まれている金属、もらい錆をしたステンレスに発生するのがこの赤錆です。

鉄が酸素・水分と接触する事で赤錆は発生します。

赤錆はどんどん内部へ浸食、金属組織を破壊しボロボロにするので悪い錆です。

銅や銅合金に発生する酸化第一銅（Cu₂O）も見た目が似ているので、

赤錆と呼ばれたりしますが、鉄にできる赤錆とは性質も科学的にも異なり別物です。

第一酸化銅は水や海水などから腐食を防ぐ効果があるので、船底塗料の原料などにも

使用されているそうです。

②黒錆

対象金属：鉄・炭素鋼・合金鋼・鋳鉄

化学式（主成分）：四酸化三鉄（Fe₃O₄）

鉄が含まれている金属に特定の加工をする事で発生するのが黒錆です。

自然界でも極まれに発生するみたいですが、空気中で300～350℃程度に加熱する、

薬液に漬けるなど人工的に発生させる事が基本です。

黒錆は内部へ浸食せず表面を保護し、赤錆の発生を抑制するため良い錆とされます。

銀に発生する硫化銀（Ag₂S）も黒錆と呼ばれ、金属の腐食生成物ではありますが

酸化物ではなく硫化物で性質や科学的にも異なるため別物です。

硫化銀も内部へ浸食はしませんが、拭き取るだけで除去できるほど脆いので防食効果

としては低く、電気抵抗の増加や美観低下などデメリットの方が多いとされます。

③白錆

対象金属：アルミニウム、亜鉛、亜鉛メッキ鋼

化学式（主成分）：酸化アルミニウム（Al₂O₃）

　　　　　　　  ： 亜鉛の塩基性炭酸塩（2ZnCO₃・3Zn(OH)₂）

アルミ製のサッシやメッキ加工品などに発生するのがこの白錆です。

アルミニウムや亜鉛が水分と接触する事で白錆は発生します。

アルミニウムの場合、白錆の浸食により表面を保護している酸化被膜が損傷し、

塩分が含まれる状況下では腐食が進行する恐れがあります。

亜鉛メッキの場合、白錆は内部へ浸食する事は少ないですが、外観を大きく損なう

ため美観上の問題が発生します。

いずれの場合も、白錆はアルミニウムや亜鉛にとって悪い錆となります。

④青錆

対象金属：銅

化学式（主成分）：塩基性炭酸銅（Cu₂(OH)₂CO₃）

銅の表面に発生するのがこの青錆又は緑青（ろくしょう）です。

古い10円玉や自由の女神などの銅像によく見られる緑色の変色が青錆です。

銅が酸素、水分、二酸化炭素などと反応する事で

赤褐色（酸化銅(Ⅰ)）→黒褐色（酸化銅(Ⅱ)）→緑青（塩基性炭酸銅）と段階的に

変化していきます。

青錆（緑青）は表面に安定した保護膜を形成し、内部への腐食を防ぐ役割があるので

良い錆となります。

⑤緑錆

対象金属：銅、ニッケル、鉄

化学式（主成分）：塩基性炭酸銅（Cu₂(OH)₂CO₃）

　　　　  　　　：水酸化ニッケル（Ni(OH)₂）

　　　　　　　  ：鉄(Ⅱ)水酸化物（Fe(OH)₂）

ニッケルや鉄などに稀に生じるものが緑錆です。

緑錆は通称であり明確な定義がないため、青錆も緑錆と呼ばれる事もあります。

塩分を含んだ高湿度など過酷な環境下のニッケルや低酸素状況下での鉄といった

特殊な環境下において非常にまれに発生します。

ニッケルや鉄に発生した緑錆は内部へ浸食していくので悪い錆となります。

⑥黄錆

対象金属：鉄、亜鉛、亜鉛メッキ鋼

化学式（主成分）：オキシ水酸化鉄（γ-FeO(OH)）

鉄やメッキ加工品などに発生するのがこの黄錆です。

酸素・水分と接触する事で黄錆は発生します。

はっきりとしたメカニズムは確立していないようですが、

鉄の場合は水分中のpH、酸素濃度など条件によって赤錆と黄錆に分かれるようです。

メッキの場合はメッキ前のリン酸亜鉛処理や酸洗い後に放置する事で発生します。

黄錆は腐食の初期段階であり、赤錆に進行する事もあるため悪い錆です。

⑦茶錆

対象金属：鉄

化学式（主成分）：酸化第二鉄（Fe₂O₃）

 　　　　　　　 ：酸化第二鉄水酸化物（FeO(OH)）

 　　　　　　　 ：水酸化鉄(Ⅲ)（Fe(OH)₃）

鉄に発生する茶色～黄褐色の錆がこの茶錆となります。

鉄が酸素・水分と接触する事で茶錆は発生します。

茶錆は通称で明確な定義はありませんが、赤錆の前段階の状態とされており

現場などでは赤錆とは区別して茶錆と呼ばれます。

茶錆自体に金属を保護する機能は無く、放置する事で赤錆へと変化するため

悪い錆となります。

金属によって「錆びやすい」と「錆びにくい」がある事はご存じかと思います。

鉄（鋼）は塗装やメッキといったコーティングをしてもいつかは錆びてしまいますが、

金・銀・プラチナなどはこのような防錆処理をしていなくてもほぼ錆びません。

なぜ金属によって錆への耐久性が異なるのでしょう？

金属の錆びやすさは「イオン化のしやすさ」によって決まります。

イオン化＝電子が移動する事です。

錆びとは鉄が「酸素」と「水分」との接触でイオン化する事で起こります。

金属のイオン化について解説します！

原鉄メールマガジンVol.12【金属の錆びやすさについて】

原田鉄工では腐食性の高い環境で使用される製品に対しては

ブラスト処理+ジンクリッチペイント塗装を推奨しております。

ジンクリッチペイントとは亜鉛を多く含んだ特殊な下塗塗料です。

ブラスト処理を行った清浄な素地しか塗装する事が出来ませんが、 

亜鉛を多く含んだ塗膜は「亜鉛」が「鉄」よりイオン化傾向が大きい事を利用し、

万が一腐食が始まっても先に亜鉛塗料が錆びる事で鉄を守り長持ちします！

【長すぎ】10ｍのフレームをブラストして無機ジンク塗装する

長さ10ｍ × 幅2ｍのフレーム

海に近い臨海部や海上・海中などの鉄にとって腐食しやすい過酷な環境でも

長期間錆から防ぐためのブラストと塗装を行います。

無機ジンクとは「無機ジンクリッチペイント」又は「無機ジンクリッチプライマー」

と呼ばれる種類の塗料です。

素地調整はブラスト処理が必須となりますが、

亜鉛を多く含んだ塗料は鉄よりイオン化傾向が大きく錆びやすい性質があるので、

自らが先に腐食（犠牲防食）する事で鉄を錆から長期間守る事ができます。

製品・建造物・製造物などの初期費用～廃棄処分費用まで

全ての費用をまとめたものをライフサイクルコスト(Life Cycle Cost)と言います。

頭文字を取ってLCCと呼ばれたり、生涯費用とも呼ばれます。

初期費用は一度にまとめて費用が必要となるので、気にされる方が多いと思います。

構造物や製造物の種類や規模によっても割合は変化しますが、

一般的なライフサイクルコストにおける初期費用の割合は20％～30％とされます。

想像の数字よりもずっと少ないと思われる方が多いと思います。

初期費用より「運用」「保守」「管理」費用の方がライフサイクルコストにおいては

多く必要で、長期的な運用になればなるほどその割合は大きくなります。

ライフサイクルコストを削減するためには長期的な視点で

運用・保守・管理のコストを抑える事が最も効果的で確実な方法です。

これらのコストを抑えるためには長期間に渡り腐食・錆から保護する事が可能な

高品質な塗装（重防食塗装）が欠かせません。

一般的な塗装の場合、塗替え工事が10年周期とされます。

塗替え工事費用、工事個所の点検・検査費用、設備停止による機会損失などなど

多くの費用と労力が10年ごとに必要となってしまいます。

重防食塗装の場合、塗替え周期はなんと最長50年！

新設又は塗替え時に重防食塗装を行えば運用・保守・管理費用を大きく削減、

ライフサイクルコストや資源、保守管理の負担低減が可能となります！

重防食塗装は原田鉄工にお任せください！

ブラスト・塗装だけでなく製缶加工も承っております。

原田鉄工の営業日

2025年度 営業日カレンダー

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今月のたお

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